RIKEN ECO HILIGHT 2009

中鉢淳 基幹研究所研究員

基幹研究所
宮城島独立主幹研究ユニット

中鉢淳 基幹研究所研究員

東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻博士課程修了。博士(理学)。
理化学研究所基礎科学特別研究員、日本学術振興会特別研究員(SPD)、アリゾナ大学研究員を経て、現職。

研究者を志す若い世代へのメッセージ

―研究者になろうと思ったきっかけは、どのようのものですか?

 元々生き物、生物学には興味があったものの、高校の途中までは、文系志望でした。周囲には大学や研究機関での基礎研究を職業としている知り合いはいませんでしたし、「生物学者」という職業が、身近なもの、現実的なものとして感じられなかったのです。
 しかしその頃(1987年)、利根川進先生(現・理化学研究所 脳科学総合研究センター長)がノーベル生理学賞・医学賞を受賞され、先生ご自身の研究内容や経歴の紹介に付随する形で、生物学研究、国内外の研究機関、研究職などに関する情報が、メディアでしばしば取り上げられました。それで研究者に対する具体的なイメージがある程度得られると同時に、生物学への興味も再燃しました。そこで思い切って大学では生物学を専攻することにしたのが最初です。

―研究にはどのような楽しさがありますか?

 日々新たな発見があり、これまでの常識が覆ることも珍しくありません。アブラムシのゲノム上から見つかった細菌由来の機能遺伝子もそのひとつですし、私のこれまでの研究からだけでも、既存の常識を覆す知見がいくつも得られています。生物が、「結果として」非常にうまく出来た精密機械であることは間違いないのですが、誰かが明確な計画・方針のもとに設計したものではないので、これからも調べれば調べるほど意外な事実が明らかになってくるはずです。こうした発見と、そこから形作られる知識の体系は、純粋な好奇心を満たしてくれるだけではなく、医療、衛生、食料生産など、世界の人々の生活を豊かにする、応用展開の重要な基盤となります。日々興味深い現象と向かい合い、謎解きをしながら、人類の進歩に貢献できる、これが研究の醍醐味だと考えています。