神戸研究所
所長 竹市雅俊
事業所の環境方針
神戸研究所キャンパス
神戸研究所は、発生・再生科学総合研究センター(CDB)の研究棟が竣工した2002年に発足しました。神戸市が進める神戸医療産業都市構想の中核機関でもあり、同地域に集積した臨床研究及びバイオビジネスとの連携も図っています。そのため、環境方針についても、地元自治体や当該構想を構成する近隣企業との連携が不可欠であり、当該構想の中核機関として、良好な環境づくりに率先して貢献していくよう努めています。
これまでの環境関連事業としては、従来直接公共下水に放流していた排水を、加熱滅菌処理装置や活性炭を通した後、タンクへ貯留し、実験棟屋根に散水する省エネ対応工事を行いました。これにより夏場の空調に係る電力の軽減を図るとともに、植栽用の散水へも利用可能とし、節水や省エネ対策に寄与しています。
神戸研究所は人工島に設置されたため、残念ながら身近の自然環境には恵まれていません。建物竣工後、敷地内の緑化に努めてきましたが、緑によって癒されるという環境には育っていません。これはこの地区全体の問題で、よりよい環境整備のために、神戸市に引き続き働きかけていく予定です。なお、日本の行政は、市街地における緑化環境の整備・維持のための投資意識が一般に貧困で、予算措置も十分とはいえません。神戸研究所の自然環境をより豊かなものにするためには、より積極的な取り組みが必要と考えています。
また、環境問題への取り組みには、法令の順守にとどまらず、社会活動・日常生活のあらゆる面で環境への配慮が求められています。持続可能な社会を構築していくためには、自治体や企業だけの問題ではなく、個人個人の行動が原因となっていることに気づき、その意識を社会で共有することが大切です。そのためには、環境問題の重要性に関する社会的キャンペーンを一層強化しなければなりません。「エコ」という標語は浸透してきましたが、具体的に何が問題なのか、社会全般でその意識はまだまだ低いといえます。また、行政自身も、自然環境の無秩序な破壊を抑制するための意識をより高めるべきで、そのための法令整備等が急務です。中央官庁すら、特定組織の権益のためだけとしか考えられないような、国際感覚からかけ離れた環境破壊を押し通そうとする事例が時としてみられ、嘆かわしい限りです。
研究と環境貢献
人類の歴史の中で、科学技術の進展が、その負の側面として地球規模での環境問題を引き起こしてきました。21世紀を「環境の世紀」として切り拓くには、再び、その科学の力に頼るしかありません。人類が快適さ、便利さを求め続ける限り、自然に任せた環境の回復は望み薄だからです。どうすれば良好な環境を復活、維持できるか、観念的・情緒的な思考や伝統すらも超越して、「科学的思考」によって問題の解決を図る必要があると強く感じています。研究者が個々の専門領域の立場から責任ある発言・提言を行い、人々の環境問題に対する意識の質を高めることが重要です。もちろん、環境問題を意識した科学技術のイノーベションを強力に推進することが、この問題の解決のために有効なことはいうまでもありません。
当神戸研究所は、発生・再生科学総合研究センター(CDB)と分子イメージング科学研究センター(CMIS)を擁しています。両センターの研究内容は直接的には環境問題への貢献を目指すものではありません。しかし、生命活動は極めて小さなエネルギーで多様な活動を行う省エネルギー工場の究極の見本のような存在です。生命現象の解明を通じて、人類が最小限の環境エネルギーの中で生きる知恵が生まれるなど、いずれ環境問題への貢献がなされ得るものと信じます。また、CDBが研究の対象とする動物の胚や胎児は、環境に対する感受性が極めて高いため、これらを扱う研究者の心の中で、環境問題の大切さが自然に育まれることを期待しています。
研究を進める上では、環境への影響を十分配慮し、関係法令や指針を順守しつつ仕事をしていくことを徹底します。研究活動に伴うエネルギーや資源の消費を自主的に節減し、その管理を徹底することによって環境負荷の低減化を図るとともに、環境問題を意識しながら行動する若者を育てることにも力を注ぎたいものです。