事業開発室
株式会社理研イノベーションとの連携のもと、当プログラムが推進する創薬テーマ・プロジェクトについて、企業や大学、外部研究機関との共同研究やライセンシング等のアライアンス部分を担当しています。
創薬抗体基盤ユニットでは、疾患治療を目指した標的分子に対するモノクローナル抗体を迅速なスクリーニング技術で樹立し、臨床応用に資します。
抗体は、生体に害を及ぼす病原体や物質などから生体を守る重要な分子として機能しています。その病原体や物質(抗原)のそれぞれに対する抗体は、抗原に特異的に結合し、排除する役割を持っています。
医療用モノクローナル抗体の多くは、主に抗原と結合した抗体に動員されたエフェクター細胞によって①抗体依存性細胞傷害(ADCC)あるいは補体による②補体依存性細胞傷害(CDC)などによって細胞死を誘導します。一部の抗体は、③抗原への結合で直接細胞死を誘導できることもあります。また、④細胞外・細胞膜に存在する情報伝達分子に結合し、活性化を阻害または誘導して細胞機能を調整します。さらに、抗体薬の技術は、癌治療のため、⑤放射性同位元素や抗がん剤の腫瘍などの標的組織に集積させる手段としても用いられます。抗体医薬はその高い分子標的能により、高い薬効を発揮することのできる医薬品となります。
抗原となる創薬ターゲット分子がヒトの構成分子である場合には、動物種間で相同性が高く、マウスを用いても特定部位を認識する抗体の取得が困難な場合、標的タンパク質の欠損した遺伝子欠損マウスを抗原感作することによって特異的な抗体の作成に成功しています。生体から高親和性抗体を産生する成熟B細胞を選別して電気融合法によってハイブリドーマを作成し、デジタル化したスクリーニング法で抗体クローンを樹立しています。
現在、B型肝炎感染阻害①、抗腫瘍活性、および新型コロナウィルス感染阻害②、神経免疫疾患阻害③などの抗体の開発に取り組んでいます。これら得られた抗体をより優れた機能を付与する変異や臨床応用へのヒト化抗体の作製などを行います。
樹立したモノクローナル抗体は、遺伝子工学的に機能改変抗体、およびヒトキメラ抗体やヒト化抗体を作製し、安全で治療効果の高い抗体を臨床応用への展開を進めます。これらの抗体を用いたCAR-T細胞療法への発展も進めます。さらに、根治の難しいがんや感染症、炎症や自己免疫疾患に対する治療抗体と共に、生活習慣病や老化を阻害・治癒できる抗体の開発なども目指します。