新規モダリティーを創出し、
パラダイムシフトを促す。
- タンパク医薬、抗体医薬、核酸医薬、細胞・再生医療、遺伝子治療のような汎用性の高いモダリティーの創出
- アジュバントベクター細胞 (aAVC) 技術のように特定の疾患領域にパラダイムシフトを促す斬新な新規モダリティーの創製
- 細胞・再生のような病態特異的な新規モダリティー技術の創製
「特定の病態を制御しうるターゲット分子」、そして「そのターゲット分子を制御しうるモダリティー」、この二つの要素が揃った時に成立するプロセスが創薬です。「ターゲット×モダリティー」から生じたプロダクトが疾患の症状を改善し、さらには治癒に至ることが証明された時に、医薬品としての価値を獲得します。
1980年代以降に発展した分子生物学は、単細胞生物~多細胞生物のシグナル伝達、生理的メカニズムを明らかにし、引いてはヒトの病態メカニズムを分子レベルで語ることを可能としました。「ターゲット」と「モダリティー」の二つの要素は、いずれも生体の分子メカニズム解明から生まれて来ています。感染症、がん、循環器疾患、免疫疾患、中枢疾患、代謝疾患等の分子レベルでの発症、進展メカニズム解明が進み、多くの創薬ターゲットが日の目を見る機会を得ました。そのターゲットを制御するモダリティー(創薬技術)も、長い歴史を誇る有機合成のみならず、遺伝子組み換えによるタンパク医薬、抗体医薬、核酸医薬、細胞・再生医薬、そしてゲノム編集技術へと進化して来ました。現在、創薬の世界は、たゆみない「ターゲット×モダリティー」の進化により、多くの新薬が生まれ、過去のアンメットニーズの在り方を大きく転換して来ました。成人病と言われる疾患の多くは、かなりの程度、制御可能な領域に入って来ています。とは言え、未だ対症療法に過ぎない場合も多く、個々人を見極め完全な治癒に至るレベルを理想とすれば、まだまだ満足出来るレベルには到達していません。また、モダリティーのバラエティーは増えましたが、病態に取って最適なレベルには程遠いと考えます。
創薬・医療技術基盤プログラム(DMP)が果たす役割は、一言でいえば「ターゲット×モダリティー」の進化を理研のサイエンス&テクノロジーを梃としてさらに加速させることにあります。本プログラムは初代・後藤プログラムディレクターの下、2010年4月1日にスタートし、以来、臨床ステージアップ/企業ライセンス16件という大きな成果を上げて来ました。この16件は、9件が新規ターゲットに着目しスクリーニングを経て製品候補に至った低分子、抗体医薬であり、7件が新たなモダリティーと捉えられる細胞・再生医療分野での成果です。殊にオリジナリティの高い新規モダリティーであるアジュバントベクター細胞 (aAVC) 技術は、臨床段階に進み、今後の創薬に大きな影響を与える可能性を秘めています。2021年度新体制のDMP創薬は、明確なアンメットニーズに焦点を当て、斬新なモダリティー(創薬技術)、そして新たなターゲット(創薬標的)に着目して創薬を進めて行くことになります。
「DMP基本戦略」は、以下の三項目に要約されます。
個々の項目を少し詳しく述べると以下の通りです。
過去、モダリティーの進化が大きな原動力となって創薬の進化を生み出して来ました。理研のライフサイエンスに纏わる先端技術を駆使して、この「ターゲット×モダリティー」進化を促進するアプローチにチャレンジします。具体的には、以下のような項目からスタートし、徐々に新たな進化の方向性にチャレンジして行きます。
理研には、「ターゲット」と「モダリティー」の二つの要素を産み出すサイエンス、テクノロジーが溢れており、独自の着眼点を持ってこのパワーを創薬に向けて解き放てば、自ずから創薬のさらなる進化が実現出来るものと確信しています。
名称 | 理化学研究所 最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)事業本部 創薬・医療技術基盤プログラム |
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発足 | 2010年4月1日 |
プログラムディレクター | 岡﨑 寛(Ph.D.) |
目的 | 基礎研究から生まれた「ターゲット×モダリティー」に関するシーズを、製薬企業における創薬プロセスや、医療の現場で実際に活用される技術に最適化させるため、創薬及び医療技術のテーマ・プロジェクトとして推進する。具体的には、基礎研究で培われたすぐれたシーズを発掘し、理研の各センターなどに設置された創薬基盤ユニットや外部ネットワークを活用して最適化を図り、最終的に企業や医療機関にアライアンスすることを目標とする。 |