ごあいさつ

プログラムディレクター 榑林 陽一 (農学博士): くればやし よういち

日本のライフサイエンス研究は、基礎研究に根ざした独創的なアイデアや新規標的の発見を通じて、革新的な医薬品や医療技術の創出に繋がる数多くのシーズを生み出してきました。近年では、それらの一部が実用化に至り、医療イノベーションに繋がる大きな成果として結実しています。一方で、研究成果を実用化へと繋げる過程では、研究から事業化への橋渡しを担う開発力や資金調達力、マネジメント人材の不足に加え、産業界との連携の難しさなど、依然として多くの課題が存在しています。

こうした課題を克服し、理研内外で創出された優れた研究成果を革新的な新薬や医療技術の実現へと導くことを目的に、2010年に理研DMP(Riken Program for Drug Discovery and Medical Technology Platforms)が設置されました。

DMPは、創薬および医療技術開発のプロフェッショナル集団です。豊富な企業経験を持つマネジメントチームと、理研内に構築された創薬技術基盤ユニット群が緊密に連携し、人工知能(AI)や実験自動化などを活用したグローバル水準の研究開発に取り組んでいます。

私たちが目指しているのは、小児がんや希少疾患、認知症等の、いまだ有効な治療法が確立されていない疾患(アンメット・メディカル・ニーズ)を科学の力で制圧し、誰もが安心して医療を受けることができる持続可能な社会の実現に寄与することです。

今後とも、皆様の変わらぬご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

DMP基本戦略

個々の項目を少し詳しく述べると以下の通りです。

  1. 新規モダリティーを創出し、
    パラダイムシフトを促す。

    1. タンパク医薬、抗体医薬、核酸医薬、細胞・再生医療、遺伝子治療のような汎用性の高いモダリティーの創出
    2. アジュバントベクター細胞 (aAVC) 技術のように特定の疾患領域にパラダイムシフトを促す斬新な新規モダリティーの創製
    3. 細胞・再生のような病態特異的な新規モダリティー技術の創製
  2. 新規創薬ターゲットを見出し、
    アンメットニーズに応える。

    1. アンメットニーズが明確な疾患にフォーカス
      希少疾患、感染症、中枢疾患、免疫疾患、等、理研創薬の強みが生かせる疾患を優先する。
    2. 感染症疾患、中でもウイルス疾患を中心に中長期的テーマと位置付ける。
      低分子医薬・抗体医薬・aAVC技術等、理研が持つモダリティーを駆使してチャレンジした新型コロナ特別プロジェクトの経験を活かす。
    3. aAVC技術のように理研で生み出され、特定の疾患領域にパラダイムシフトを促す新規モダリティーを活用してパイプラインを構築して行く。
  3. 「ターゲット×モダリティー」
    進化の方向性を探る。

    過去、モダリティーの進化が大きな原動力となって創薬の進化を生み出して来ました。理研のライフサイエンスに纏わる先端技術を駆使して、この「ターゲット×モダリティー」進化を促進するアプローチにチャレンジします。具体的には、以下のような項目からスタートし、徐々に新たな進化の方向性にチャレンジして行きます。

    1. タンパク医薬、抗体医薬の低分子への転換
      ごく一部のサイトカインシグナルは、低分子で代替できることが示されており、この事実から普遍的法則性を見出し、次世代の創薬を目指す。

理研には、「ターゲット」と「モダリティー」の二つの要素を産み出すサイエンス、テクノロジーが溢れており、独自の着眼点を持ってこのパワーを創薬に向けて解き放てば、自ずから創薬のさらなる進化が実現出来るものと確信しています。

プログラム概要

創薬・医療技術基盤プログラム
名称 理化学研究所 最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)事業本部
創薬・医療技術基盤プログラム
発足 2010年4月1日
プログラムディレクター 榑林 陽一(Ph.D.)
目的 基礎研究から生まれた「ターゲット×モダリティー」に関するシーズを、製薬企業における創薬プロセスや、医療の現場で実際に活用される技術に最適化させるため、創薬及び医療技術のテーマ・プロジェクトとして推進する。具体的には、基礎研究で培われたすぐれたシーズを発掘し、理研の各センターなどに設置された創薬基盤ユニットや外部ネットワークを活用して最適化を図り、最終的に企業や医療機関にアライアンスすることを目標とする。

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