多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御

組織・研究内容

研究課題名
ナチュラルヘルパー細胞の分化機構の解明

茂呂和世
研究代表者
茂呂和世
JST・さきがけ研究員
慶應義塾大学・共同研究員
研究室HPE-mail

研究内容

 我々は、T細胞やB細胞、NK細胞、NKT細胞とは異なる新しいリンパ球を発見し、ナチュラルヘルパー(natural helper: NH)細胞と名付けた。NH細胞は他のリンパ球と異なり、脾臓やリンパ節には存在せず、腸間膜などの腹腔内脂肪組織で発見されリンパ球集積Fat-associated lymphoid cluster(FALC)に存在するユニークなリンパ球である(Moro et. al Nature. 463, 540-4, 2010) 

 NH細胞は、アレルギーや寄生虫感染で産生がみられるIL-33に反応することでIL-5、IL-6、IL-13などのTh2サイトカインを産生する。その産生量はTh2細胞や肥満細胞、好塩基球など、これまで知られてきたTh2サイトカイン産生細胞を遥かに凌駕する。NH細胞の産生するTh2サイトカインは腹腔内B1細胞の自己複製を維持し、B細胞によるIgA産生を促進し、寄生虫感染では杯細胞の過形成を誘導することで排虫を促すことが明らかになっている。

 NH細胞が存在しないγc-/-マウスに野生型マウスのHSC(hematopoietic stem cell)を移植すると、NH細胞の分化が回復することから、NH細胞はHSC由来の細胞と考えられる。 IL-2R-/-マウス、IL-7-/-マウス、IL-15-/-マウスのうちIL-7-/-マウスでのみNH細胞の欠損がみられるため、γc-/-マウスでのNH細胞の欠損は、IL-7シグナルに依存したものであることがわかっている。また、胸腺を欠損するnudeマウスにもNH細胞は正常に存在することから、NH細胞はT細胞とは異なり、胸腺外分化する細胞であることが明らかになっている。

 本研究では、骨髄のHSCから分化するNH細胞が、脂肪組織の成熟NH細胞となるまでの間、どのような細胞と前駆細胞を共有し、どのような過程を経て分化するのかを明らかにするとともに、分化に関わるマスター遺伝子を同定したいと考えている。

主な論文

* correspondence
研究代表者
茂呂和世

Moro K, Yamada T, Tanabe M, Takeuchi T, Ikawa T, Kawamoto H, Furusawa J, Ohtani M, Fujii H, *Koyasu S.
Innate production of Th2 cytokines by adipose tissue-associated c-Kit+Sca-1+ lymphoid cells.
Nature. 463: 540-4, 2010

* Koyasu S, Moro K.
Type 2 innate immune responses and the natural helper cell.
Immunology. 132: 475-81, 2011

* Koyasu S, Moro K, Tanabe M, Takeuchi T.
Natural helper cells: a new player in the innate immune response against helminth infection.
Adv Immunol. 108: 21-44, 2010

 
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