多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御

組織・研究内容

研究課題名
骨組織による神経を介したリンパ球分化増殖制御機構の解明

北村 俊雄
研究代表者
片山 義雄 
神戸大学・講師
研究室HPE-mail

研究内容

 哺乳動物の各種臓器の中で、生体で最も固い組織である骨に完全に覆われて強固に保護されている組織は、脳と骨髄のみである。すなわち、免疫構築を含めた造血の場である骨髄は、生命の恒常的維持において脳と同等の最も大切な高次組織と捉えることができる。骨髄にとって骨は単なるプロテクターではなく、一見無関係なように思える「骨代謝」と「造血システム」は、最近にわかにその深い関係がクローズアップされるようになった。我々は、脳からの交感神経シグナルが骨芽細胞性造血幹細胞ニッチを制御することにより、間接的に造血幹細胞の運命が脳で支配されている構図すなわち、「脳・骨・血液連関」を報告した (Cell, 2006)。更に我々は、この連関経路に骨芽細胞をはじめとした造血微小環境におけるビタミンD受容体の存在が必須であり、カテコラミン受容体シグナルの下流で幹細胞ニッチの働きを調節していることも報告している (Blood, 2010)。これらの研究は、骨代謝に異常を発現する神経ミエリン鞘機能障害マウスでのリンパ球造血不全のメカニズム解析に端を発している (Immunity, 2003)。このように免疫・造血制御機構についての研究において、神経支配を含めた骨代謝研究の視点はもはや不可欠のものとなっている。

 しかしこれらはまだ、脳をハブとした情報交流による生体支配のほんの一部に過ぎない。骨代謝を司る神経シグナルが脳におけるエネルギー感受機構と連動しており、生体中の各臓器でのエネルギー蓄積・使用状態の情報が脳に統合され、様々な神経シグナルという形で骨代謝ひいては造血組織に影響を与え、免疫システムを高位から支配している可能性が高い。また、この影響が適度に調整されるためには骨から脳への求心性神経伝達の存在が必要であると我々は考えている。

 本研究では、免疫構築に関与するこれらのネットワークを明らかにすることを目的としている。

主な論文

* correspondence
研究代表者
片山 義雄 

Kawamori Y, Katayama Y, Asada N, Minagawa K, Sato M, Okamura A, Shimoyama M, Nakagawa K, Okano T, Tanimoto M, Kato S, and *Matsui T.
Role for vitamin D receptor in the neuronal control of the hematopoietic stem cell niche.
Blood. 116: 5528-5535, 2010.

Katayama Y, Battista M, Kao WM, Hidalgo A, Peired AJ, Thomas SA, and *Frenette PS.
Signals from the sympathetic nervous system regulate hematopoietic stem cell egress from bone marrow.
Cell. 124: 407-421, 2006.

Katayama Y, and *Frenette PS.
Galactocerebrosides are required postnatally for stromal-dependent bone marrow lymphopoiesis.
Immunity. 18: 789-800, 2003.

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