多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称：細胞運命制御

組織・研究内容

研究課題名
Bリンパ球終末分化機構の解明

長岡　仁
研究代表者
長岡　仁
岐阜大学　医学研究科　分子病態学　教授
研究室HP｜E-mail
木村　正志
連携研究者
木村　正志
岐阜大学　医学研究科　分子病態学　併任講師

研究内容

　免疫記憶は、特異性免疫の最も重要な特徴であり、ワクチン療法のみならず自己免疫疾患の病態にも関わると考えられる重要なテーマである。B細胞免疫記憶の細胞生物学的基盤は、抗原・T細胞からのヘルプ・サイトカイン刺激等による所謂『胚中心プログラム』と呼ばれる分化の発動の結果作られる2種類の細胞、即ち記憶B細胞と形質細胞にある。この胚中心プログラムは、外界からの複数のシグナルと、恐らくはB細胞intrinsicなプログラムの共同の上で、どちらの細胞へ分化していくかというfate選択が起きる複雑な分化の系と捉えられる。

　長岡らは、『胚中心プログラム』の中の中心的分子で、効果的な防御抗体遺伝子の形成に必須の分子であるAIDの分子機能及びその発現制御について研究してきた。その中で、AID発現を見るため導入したAicda-creマウスを解析し、このマウスを特定のレポーターマウスと掛け合わせて用いる事で、非常に高感度かつ忠実に活性化B細胞をマークできる、つまり『胚中心プログラム』以降の細胞を高効率にラベルできる事を見出した （論文投稿中） 。本研究計画は、この系を利用しB細胞最終分化過程における運命決定の分子機構を明らかにする事を目標とする。そのため、まず、あるモデル抗原による刺激において、ナイーブB細胞集団が活性化された結果分化形成される形質細胞対記憶B細胞の定量的な関係を明らかにした上で、Blimp-1, Pax5等転写因子活性の増減を強制発現やRNAiを用いて行い、その分化運命決定での量的な変化に及ぼす影響を明らかにする。 また、抗原受容体からのシグナル強度と形質細胞への分化誘導の関係を明確にし、それに関連して抗体のクラススイッチと親和性成熟の有無がこのステージでの分化運命選択ににどのように働くかを明らかにする。

主な論文

* correspondence
研究代表者
長岡　仁

Tran T H, Nakata M, Suzuki K, Begum N A, Shinkura R, Fagarasan S, *Honjo T and Nagaoka H.
B cell-specific and stimulation-responsive enhancers derepress Aicda by overcoming the effects of silencers.
Nat Immunol. 11: 148-154, 2010.  

Nagaoka H, Tran T H, Kobayashi M, Aida M and *Honjo T.
Preventing AID, a physiological mutator, from deleterious activation: regulation of the genomic instability that is associated with antibody diversity.
Int Immunol. 22: 227-235, 2010  

Nagaoka H, Ito S, Muramatsu M, Nakata M and *Honjo T.
DNA cleavage in immunoglobulin somatic hypermutation depends on de novo protein synthesis but not on uracil DNA glycosylase.
Proc Natl Acad Sci U S A 102: 2022-2027, 2005.  

連携研究者
木村正志

Wakahara K, *Ohno T, Kimura M, Masuda T, Nozawa S, Dohjima T, Tamamoto T, Nagano A, Kawai Go, Matsuhashi A, Saitoh M, Takigami I, Okano Y and Shimizu K.
EWS-Fli1 Upregulates Expression of the Aurora A and Aurora B Kinases.
Mol Cancer Res. 12: 1937-1945, 2008.  

*Kimura M and Okano Y.
Human Misato regulates mitochondrial distribution and morphology.
Exp Cell Res. 313: 1393-1404, 2007.  

Crosio C, Fimia GM, Loury R, Kimura M, Okano Y, Zhou H, Sen S, Allis CD and *Sassone-Corsi P.
Mitotic phosphorylation of histone H3: spacio-temporal regulation by mammalian Aurora kinases.
Mol Cell Biol. 22: 874-885, 2002.  

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