野依良治博士からの三つの質問

 皆さん、こんにちは。理化学研究所理事長の野依良治です。私は科学者です。科学の中でも、「化学」という領域で研究してきました。幼い頃に科学に憧(あこが)れを抱いた私は、研究に一生懸命打ち込んでいたら、「ノーベル化学賞」を、米国の友人たちと一緒に頂くことになりました。そして今も、ずっと研究を続けています。もちろん、研究がだい好きだからです。 
さて今日は、皆さんに三つの質問をします。その中で、皆さんが環境について、そして自然科学について考えることの手伝いをしたいと思います。ぜひ、最後まで読んでください。

 皆さんはふだん、インターネットをよく使いますか? インターネットはさまざまな情報を瞬時に取り出すことができる、とても便利な道具です。たとえば今、皆さんは「環境」について調べるために、この理化学研究所のホームページを見ているのかもしれません。このホームページの中に、皆さんが探している答えはあったでしょうか?

 インターネットには、確かにたくさんの情報があります。しかしそれは、言葉や、図や、写真に過ぎません。間違えてはいけません、それらは決して皆さんが本当に求めている「答え」ではない。皆さんは、インターネットに載っている答えらしきものを、きちんと自分で確かめてみましたか? 心から納得していない「答え」はフェイク(にせもの)であることが少なくありません。フェイクはインターネットに限らず、本の中や、大人の言葉の中にもあります。皆さんはまず、たくさんの情報の中から本物の答えを探す方法を学ばなければなりません。「学ぶ」はもともと「まねる」で倣(なら)って行うことです。知識を集めることは大切ですが、自分の目で見て、自分の手で触れてみて、自分で納得しなければなりません。インターネットの中に、皆さんが探す答えはありません。せいぜい、学ぶためのきっかけや、考えるヒントがあるくらいです。では、これから一緒に、本当の「答え」の見つけ方を学んでいきましょう。

一つめの質問をします。