PICK UPコラム

理事長ファンドワークショップ
研究組織間の相互理解と連携を促進し、理研の力を結集

「環境・エネルギー・食糧研究」今後のメインストリームに

 2009年3月15日、16日の両日、湘南国際村センター(神奈川県葉山町)において、第14回『理事長ファンドワークショップ』(以下、ワークショップ)を開催しました。テーマは、「持続可能な社会を構築するための科学は何か 〜環境・エネルギー・食糧分野の研究推進のための未来予想図を描く〜」。ワークショップを契機に、従来の研究の枠組みを超えた新たな知の連携(「個人知」から「理研知」へ)を進めています。
 ワークショップは、2007年度から年6〜7回の頻度で実施している、講演や討議を中心とする所内活動です。選定されるテーマは、研究者からのシーズや議論・マネジメント部門の調査や議論・外部有識者の意見等(後述、脚注)をもとに、経営陣がその都度決定。なお過去に開催されたワークショップでは、創薬研究、研究インフラとなるスーパーコンピュータの利用研究のあり方や、ライフサイエンス系の統合データベースの構築などを取り上げてきました。
 今回の「環境・エネルギー・食糧研究」に関する所内の議論は、『理研科学者会議』で環境・エネルギー分野に対する理研の貢献のあり方について2007年度内に数回にわたり行われたのが始まりです。さらに、『第54回研究プライオリティ会議』(2008年6月)では、「エネルギー・地球環境関連基礎研究の現状と課題」と題し、所内では当該分野に特に力を入れている基幹研究所と植物科学研究センターの取り組みが紹介され、今後の課題についても議論しました。また同会議では、本ワークショップで議論をさらに深めることも提案されました。
 ちょうどこの時期は、北海道洞爺湖サミット(2008年7月)や米オバマ大統領(今年1月就任)が打ち出したグリーンニューディール政策など、国際的な地球環境問題に対する意識の高まりや経済状況の悪化とも相俟って、CO2削減の強化やクリーンエネルギー産業の重点化政策がもはや時代の流れになりつつありました。
 なお、2002年のヨハネスブルクサミットでは、アナン国連事務総長(当時)が、「WEHAB+P(Water水、Energyエネルギー、Health健康、Agriculture農業、Biodiversity生物多様性、Poverty貧困)」といった課題を解決することが人類存続のために必要であると指摘しています。理研においても自然科学の多岐にわたる基礎研究の知見を総合的に投入し、これらの課題を解決するような科学技術が求められていると考えています。環境・エネルギー・食糧分野の研究はまさにこの「WEHAB+P」の大部分を占めるものであり、今後の理研にとって主要なテーマの一つに位置付けられることは間違いありません。

2日間にわたる活発な論議から、新たな連携・新たな研究分野を創成(「理研知」へ)

 こうした背景下で開催された第14回ワークショップは、当該分野としては初めてということもあり、(1)所内の「環境・エネルギー・食糧」分野の研究動向を俯瞰し現状を把握する、また(2)2030年・2050年の社会像を踏まえて理研としての研究のあり方(方向性)を策定する内容となりました。
 ワークショップには、所内の研究者や外部有識者(企業・行政)など57名が参加し、2日間で約30の講演とそれに基づく活発な議論を展開しました。そして、「さまざまな分野の研究者から直接話を聞くことで、所内の当該分野における取り組みの現状が把握できた」「お互いを知ることで、新たな分野間連携という波及効果が期待できる」など、ワークショップの目的につながる成果を得ています。
 現在、理研では環境・エネルギー・食糧分野の研究テーマをより具体的・戦略的に推進するため、本ワークショップ参加者等との議論をさらに進めて対象案件を選定しています。また、次年度より開始する環境・エネルギー分野の所内横断的研究プログラムを検討しており、所内のみならず産業界や他研究機関とも協力関係を強化しながら、実用化に向けた革新的技術を目指します。

※理研科学者会議

 理研において、研究センターのセンター長・副センター長やグループディレクターなど、研究所・センターの核となるような研究者約30名から構成される会議。(1)理事長の諮問に応じ、長期的視野にたって実施すべき研究分野、効率的な研究推進施策などについて議論・検討し、理事長に答申すること。(2)必要に応じて、研究所が実施する社会との係わりの深い研究プロジェクト等の社会への啓蒙及び理解増進を図る方策等について検討し、その結果を理事長に提言すること。を職務とし、研究現場を担う指導者としての立場からボトムアップによる議論を行い、研究理念とその実現に向けた検討を行うことを目的としています。

※研究プライオリティー会議

 理研の研究者だけでなく、外部の研究者や産業界からの有識者25名以内で構成された審議組織。本会議は、研究ポテンシャルの更なる向上や研究総合力の強化、新たな研究領域・研究課題を創出するための研究政策全般の審議並びに、そこでの結果を踏まえた提言や報告を理事長に対して行います。

WS集合写真