横浜研究所

小川智也

横浜研究所
所長 小川智也

事業所の環境方針

 横浜研究所は、2000年に理研のライフサイエンスの拠点として設置された当初から、大気汚染などの自然環境から治安等の地域環境に至るまで、横浜市や地域のコミュニティーとともに積極的な改善に取り組んできました。
 所内においては、植樹による屋外の緑化、芝生化や休憩所設置等による運動/休息スペースとしての多目的広場の整備、屋内におけるスポーツ/イベント等のための多目的スペースの増設を実現し、省エネ対策としては、太陽光発電設備の設置、感知式の瞬間点灯/消灯装置の設置、更にはエネルギー使用状況の見える化等による職員の意識の向上に努めてきました。
 環境問題への対応は、心身の健康を念頭に、自然環境、地域環境、研究環境、省エネルギーのあらゆる観点から取り組む必要がありますが、何より職員一人一人の意識および自治体や近隣企業との連携、相互協力が不可欠です。

西NMR棟の南側に群生する野生の花々
西NMR棟の南側に群生する野生の花々

 今後も常に環境問題を意識した提案や、武蔵野美術大学との共同プロジェクト(※)のような文化的な観点も含めた研究環境の改善を継続していくことが重要であると考えており、自治体や近隣企業との定期的な連絡会等の場もこれまでと同様、大いに活用していきたいと考えています。

(※) 武蔵野美術大学との共同プロジェクト=科学と芸術の異文化交流を目的として、武蔵野美術大学の卒業前の大学院生や学生の皆さんの作品を、毎年数十点ずつ横浜研究所内に年間展示しています。

研究と環境貢献

 環境問題は、地球温暖化、エネルギー問題、生物多様性の保全、食料の供給、など相互に関係の深い複雑な課題を内包する問題ですが、21世紀の人類生存戦略という社会ニーズに対し、科学技術の成果を還元すべき最重要課題です。
 私自身は有機化学の視点から生命現象を研究してまいりましたが、環境問題に代表される地球規模の課題の解決に関しては、個々の科学研究者の自由な研究とともに、そこから生まれる多様な成果を戦略的に集約する拠点の形成、研究者のネットワークや研究機関の連携など、トップダウンの運営体制が不可欠と考えています。
 当研究所は、広くゲノム研究から疾患研究まで研究しており、その中で環境への貢献としては第一に、植物科学研究センター(PSC)における研究が挙げられます。
・ バイオマスを利用する環境対応型素材の開発による次世代バイオインダストリーの創生
・ 低炭素社会実現に資するスーパー樹木の作出など、樹木の生長に関する基礎研究
・ 食料生産に自由度を付与する環境耐性植物の研究
といった例示ができます。
 更に、同和化学との連携研究センターでは、重金属を吸収するコケ植物体の探索研究とこれを用いた排水処理装置の開発によって土壌浄化、更に希少資源の回収を同時に行う成果を目指しています。また、近隣企業の一つである東京ガス(株)とは、屋内緑化、ビオトープ等々について、共同研究の可能性を模索しているところです。
 PSCの研究成果を基に創立されたベンチャー会社(インプランタイノベーションズ(株))は、植物の形質転換や親株へのかけ合わせ技術、土壌改良材の開発等、環境対策に応用できる技術や資材を、幅広い企業や研究機関に提供しています。
 更に、オミックス基盤研究領域の研究成果からも、イネや大豆のcDNAライブラリーやクローンの作成、新たなcDNAリソースの創出等の技術、全ゲノム上の定量的RNA発現解析技術など、植物研究への応用により環境問題の解決への貢献が期待できるものと思います。
 その他、当研究所で行なわれている花粉症などの免疫・アレルギー研究や遺伝的因子と環境的因子により惹起する疾患研究、外部に開放しているNMRなどの大型解析装置やライフサイエンスの情報基盤などを通した、様々な環境問題に取り組む企業や大学、研究機関との連携研究によって、広く環境問題の解決に貢献したいと考えています。