RIKEN ECO HILIGHT 2008

三成剛生

三成剛生

印刷会社を経て、2006年、京都大学理学研究科化学専攻 博士後期課程修了。同年、2006年理化学研究所基礎科学特別研究員。2009年4月より、独立行政法人 物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)研究者。理学博士。所属は、π‐電子エレクトロニクスグループ。

研究者を志す若い世代へのメッセージ

 私は、民間の大手印刷会社での勤務を経て、いまの研究の道に入りました。ビジネスと研究の世界には大きな違いがあります。ビジネスの世界では、企業間のシェア争いの中で、品質やプロセスの改善が重視されます。それは既存のやり方をより洗練させていくという姿勢です。一方、理研での研究の面白いところは、誰もこれまでやったことのない分野にチャレンジできることです。
 研究における最終的なゴールは実用化であり、成果を世の中に還元しなければ研究の価値はないというのが私の信条です。有機FETのような基本的な電子デバイスは、世界中で使われるエレクトロニクス製品に内蔵されるものです。実用化を目指すには、デバイスの信頼性を高める製造や品質管理の技術が重要になってきます。その時に、企業での製造の経験が生きてくるかと思います。ただ、いまは、まだ改良の余地がある電子デバイスの基本性能を向上させること、そのために有機分子の自己組織化というユニークで、奥の深い現象を、誰よりも深く探求していきたいと思っています。
 何かを創り出す方法は、一通りではありません。普段、当たり前にやっていることも、「なぜこのやり方になったのだろう」「違う手法はないだろうか」と考えてみると面白い発見がいろいろありますよ。