多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御

組織・研究内容

研究課題名
哺乳動物網膜をモデル系とした神経・グリア分化制御分子基盤の解明

渡辺 すみ子
研究代表者
渡辺 すみ子
東京大学医科学研究所 特任教授
研究室HPE-mail

研究内容

 眼の発生過程の分子基盤は、高齢化社会を迎え、再生、アンチエイジングという観点からも注目されている。しかし、幹細胞、再生医療、さらには血液学で行なわれてきたような細胞分化のシグナル制御と系統的解析、という観点からみた場合、網膜はまだまだ課題の多い分野である。網膜は中枢神経の一部であるが、小さく比較的単純な全体構造を持ち、神経研究のモデル系として好適の器官である。網膜神経・グリア細胞に分化する網膜幹細胞の存在が想定されていたがその実体は不明であった。そこで我々は網膜の幹細胞と細胞系譜を血液幹細胞同定と同様の攻略法で同定することをめざして表面抗原の網膜での発現パターンと標識される細胞群の性質を検討し、網膜幹(CD138)、プロジェニター(CD15, c-kit)細胞、視細胞前駆細胞(CD73)、グリアの前駆細胞(CD44)を同定した。CD44は脳神経でも明らかではない、グリア系列の細胞のきわめて初期の表面マーカーである。本研究では、これらの知見を利用して網膜幹細胞から神経・グリアへの分岐点について、その運命決定制御の分子基盤を明らかにすることを目的とする。このため、網膜幹細胞、神経前駆細胞、グリア前駆細胞のトランスクリプトーム、エピジェネティカルな情報を収集し、特異的に発現する遺伝子の運命決定における機能を網膜器官培養で明らかにする。網膜グリア細胞は網膜損傷時に幹細胞様に脱分化する事も報告されており、上記の知見を応用し、脱分化メカニズムも明らかにする事で、網膜再生にも有用な知見となる事が期待される。

主な論文

* correspondence
研究代表者
渡辺 すみ子

Satoh S, Tang K, Iida, A, Inoue M, Kodama T, Tsai S-Y, Tsai M-J, Furuta Y, and *Watanabe S.
The spatial patterning of mouse cone opsin expression is regulated by BMP signaling through downstream effector COUP-TF nuclear receptors.
J. Neurosci., 29: 12401-12411, 2009

Koso H, Iida, A, Tabata Y, Baba Y, Satoh S, Taketo MM, *Watanabe S.
CD138/syndecan-1 and SSEA-1 mark distinct populations of developing ciliary epithelium that are regulated differentially by Wnt signal.
Stem Cells, 26: 3162-3171, 2008

Saito R, Tabata Y, Muto A, Arai K, *Watanabe S.
Melk-like-kinase plays a role for haematopoiesis in zebrafish.
Mol Cell Biol. 25: 6682-6693, 2005

 
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