多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御

組織・研究内容

研究課題名
造血系転写因子によるマスト細胞分化決定機構の解明

北村 俊雄
研究代表者
大根田 絹子
高崎健康福祉大学・教授
研究室HPE-mail

研究内容

 マスト細胞は造血幹細胞を起源とし、結合組織や粘膜などの末梢組織において最終分化する。マスト細胞にはGATA1, GATA2, SCL, PU.1など、他の細胞系列で相補的な発現様式や拮抗的な役割を示す複数の転写因子が同時に発現している。また、造血系転写因子の発現量を人為的に変化させたときに、異常な由来を持つマスト細胞前駆細胞(MCP)が様々な細胞系列から形成されるが、これらの異常MCPは末梢組織で正常に分化することができない。これらのことから、マスト細胞分化の決定機構には、他の細胞系列への分化決定条件から外れた細胞が負の選択としてMCPを形成できるような「可塑性」が残されており、一方で、異常な由来を持つMCPは末梢組織で最終分化することがないように制御されていると考えられる。また、マスト細胞には、他の血球系列にはみられない独自の転写因子ネットワークが存在していることが示唆される。

 本研究はこれらの仮説を検証し、造血系転写因子によるマスト細胞への分化決定機序を明らかにすることを目的とする。具体的には、マスト細胞に発現する転写因子のうち、他の転写因子との相互作用がよく知られているGATA1に注目して解析を進める。研究代表者の大根田らは、以前Cre-loxPシステムを用いた「条件付Gata1ノックアウトマウス」を用いて、成体マウスで誘導的にGATA1を完全に欠失させたときの赤血球造血障害を報告した(Blood, 2008)。この実験系を用いて、GATA1の完全欠損下でMCPが形成されるか否かを解析する。また、大根田らはBACレポータートランスジェニックマウスを用いて、赤血球におけるGata1遺伝子の発現に必要な制御領域を分化段階を追って詳細に解析した(Mol Cell Biol., 2009)。この実験系を用いて、マスト細胞でのGata1遺伝子発現制御機構を解明する。

主な論文

* correspondence
研究代表者
大根田 絹子

*Ohneda K, Ohmori S, Ishijima Y, Nakano M, and Yamamoto M.
Characterization of a functional ZBP-89 binding site that mediates Gata1 gene expression
during hematopoietic development.
J Biol Chem. 284: 30187-30199, 2009.

Suzuki M, Moriguchi T, Ohneda K, and *Yamamoto M.
Differential contribution of the Gata1 gene hematopoietic enhancer to erythroid differentiation.
Mol Cell Biol. 29: 1163-1175, 2009.

Gutierrez L, Tsukamoto S, Suzuki M, Yamamoto-Mukai H, Yamamoto M, *Philipsen S, and *Ohneda K.
Ablation of Gata1 in adult mice results in aplastic crisis, revealing its essential role in steady-state and stress erythropoiesis.
Blood 111: 4375-4385, 2008.

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