多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御
研究課題名
胚発生過程における多能性造血細胞の分化方向決定機構の解明
研究内容
胚発生過程において血液細胞は卵黄嚢において初めて検出される。初期の卵黄嚢で発生する血液細胞のほとんどは胎生期に一過性に産生される胎仔型赤血球である。一方、リンパ球系譜とミエロイド系譜の分化能を兼ね備えた成体型の多能性造血細胞は、胎仔型赤血球の産生に遅れて大動脈周辺領域や卵黄嚢に検出される。
研究代表者らは、発生過程の最初に出現する多能性造血細胞を細胞表面抗原の発現を指標にして同定してきた(PNAS, 2009)。この発生最初期の多能性造血細胞は、胎仔肝臓や成体骨髄に存在する造血幹細胞と異なり、B細胞サブセットとしてB1B細胞系譜へ偏向分化することを突き止めている。またこれまでに最も未熟な造血細胞といえる胎仔型赤血球と多能性造血細胞の共通前駆細胞(胎仔型・成体型共通前駆細胞)の単離に成功している。
そこで本研究課題では、発生段階の進行に従って生じる多能性造血(幹)細胞の分化能の変遷(胎仔型赤血球への分化能の消失、B細胞サブセットへの分化能の変化)に注目して、その分子機構を明らかにする。また胎仔型・成体型共通前駆細胞から胎仔型赤血球と多能性造血細胞への分化方向の振り分け機構についてはその細胞内外の因子を同定する。
主な論文
- 山根 利之
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*Yamane T, Hosen N, Yamazaki H, and *Weissman IL.
Expression of AA4.1 marks lymphohematopoietic progenitors in early mouse development.
Proc Natl Acad Sci USA. 106: 8953-8958, 2009.*Yamane T, Dylla SJ, Muijtjens M, and Weissman IL.
Enforced Bcl-2 expression overrides serum and feeder cell requirements for mouse embryonic stem cell self-renewal.
Proc Natl Acad Sci USA. 102: 3312-3317, 2005.*Yamane T, Kunisada T, Tsukamoto H, Yamazaki H, Niwa H, Takada S, and Hayashi SI.
Wnt signaling regulates hemopoiesis through stromal cells.
J Immunol. 167: 765?772, 2001. - 山崎 英俊
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*Yamazaki H, Tsuneto M, Yoshino M, Yamamura KI, and Hayashi SI.
Potential of dental mesenchymal cells in developing teeth.
Stem Cells. 25: 78-87, 2007.*Yamazaki H, Sakata E, Yamane T, Yanagisawa A, Abe K, Yamamura KI, Hayashi SI, and Kunisada T.
Presence and distribution of neural crest-derived cells in the murine developing thymus and their potential for differentiation.
Int Immunol. 17: 549-558, 2005.