多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御

組織・研究内容

研究課題名
胚中心B細胞から記憶B細胞への運命決定機構

北村 大介
研究代表者
北村 大介
東京理科大学生命医科学研究所・教授
研究室HPE-mail

研究内容

 抗原に反応したB細胞はヘルパーT細胞からのCD40LやIL-4を介した刺激により増殖して、一部は短期生存プラズマ細胞に、一部はIL-21を受けてさらに増殖し胚中心を形成する。胚中心B細胞では抗原受容体のクラススイッチと体細胞超変異が起こり、その結果多様化したB細胞の中から抗原に高い親和性をもつB細胞が選択され、その後それらは記憶B細胞と長期生存プラズマ(LP)細胞という2方向の分化を遂げる。このようなB細胞の段階的分化に関わる転写因子として、プラズマ細胞分化にはBlimp1とIRF4が不可欠で、Blimp1の発現を抑制するBcl-6が胚中心B細胞の分化増殖に不可欠である。しかし、胚中心B細胞から記憶B細胞への分化誘導に必要な転写因子や制御機構は全く不明である。記憶B細胞は数が非常に少なく、特異的なマーカーもないため、in vivoでその分化過程を解析することは非常に困難である。また、ナイーブB細胞から胚中心B細胞を経て記憶B細胞やLP細胞へと分化する過程を再現する培養系がこれまで存在せず、研究の進展を阻んできた。
 この問題を解決すべく、私たちは誘導性胚中心B(iGB)細胞培養系を確立した。この系では、ナイーブB細胞がクラススイッチし、胚中心B細胞の形質を発現して著しく増殖する。最初にIL-4を用いて培養したiGB-4細胞をマウスに移入すると形質も機能も記憶B細胞と同等の細胞(iMB細胞)となり、IL-4の後にIL-21で培養したiGB-21細胞はマウスの骨髄でLP細胞となる。また、iGB-21細胞をさらに培地のみで培養したiGB-m細胞はiMB細胞への分化能を回復する。よって、この系は成熟B細胞の段階的分化をin vitroで再現する初めての実験系であるといえる。
 この系を基本として、本研究では胚中心B細胞から記憶B細胞への分化誘導に関わる因子群を同定し、それらの相互作用を解明し、記憶B細胞分化誘導の転写制御ネットワークを明らかにする。具体的には、iGB-4, iGB-m細胞,および生理的記憶B細胞で選択的に発現する転写因子を同定し、それらの強制発現制御によるiGB細胞およびiMB細胞への影響を調べ、記憶B細胞分化誘導因子の候補を絞る。それらのノックアウトマウスにおけるT依存性免疫応答を解析し、記憶B細胞分化異常の有無を調べ、記憶B細胞分化誘導因子を確定する。さらには、その因子の発現を調節する上流因子、またその因子に制御される下流因子を同定し、それら転写因子の相互制御様式とその記憶B細胞分化への関わりを明らかにする。

主な論文

* correspondence
研究代表者
北村 大介

Nojima T, Haniuda K, Moutai T, Matsudaira M, Mizokawa S, Shiratori I, Azuma T, and *Kitamura D.
In-vitro derived germinal centre B cells differentially generate memory B or plasma cells in vivo.
Nature Communications. 2: 465, 2011.

Nakayama J, Yamamoto M, Hayashi K, Satoh H, Bundo K, Kubo M, Goitsuka R, Farrar MA, and *Kitamura D.
BLNK suppresses pre-B cell leukemogenesis through inhibition of JAK3.
Blood. 113: 1483-1492, 2009.

Hayashi K, Yamamoto M, Nojima T, Goitsuka R, and *Kitamura D.
Distinct signaling requirements for Dμ selection, IgH allelic exclusion, pre-B cell transition and tumor suppression in B-cell progenitors.
Immunity. 18: 825-836, 2003.

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