1.希土類触媒による精密重合反応の開発
優れた物性を持つ高分子材料の創製は合成化学における重要な研究課題の一つです。我々は特に、カチオン性モノアルキル希土類錯体の特異な性質を利用した高活性、高選択的な重合触媒系の構築を行い、従来の触媒系では困難な重合反応の開発と新規高分子材料の創製に成功しています。
2.希土類触媒による精密有機合成反応の開発
有機金属触媒を用いた高効率、高選択的な有機物質変換反応の開発は有機合成化学における重要な研究課題です。我々は独自に開発した希土類錯体の特異な触媒活性を活用し、特異な選択性を持つカルボアルミ化反応や、原子利用効率の高いC-Hシリル化反応、不斉C-Hアルキル化反応などを開発しています。
3.二酸化炭素をC1炭素源として利用する有機合成反応の開発
二酸化炭素(CO2)は天然に豊富に存在し、安価に入手可能なC1炭素源です。また、CO2は化石燃料等の消費に伴い多量に排出されており、これを再生可能な炭素源として利用し、高付加価値な有機化合物を合成する手法は、有機合成化学における興味深い課題の一つです。我々は遷移金属触媒、特にN-ヘテロサイクリックカルベン配位子を有する銅触媒(NHC-Cu触媒)の特徴を利用し、様々な有機分子のカルボキシル化反応の開発を進めています。
4.多核金属錯体による不活性分子の活性化
複数の金属中心を有する多核錯体(クラスター錯体)は、多点配位・多電子移動などにより単核錯体には見られない特異な協同効果の発現が可能であり、全く新しい分子触媒の開発に繋がると期待されます。我々は希土類金属や前周期遷移金属ヒドリドクラスターの研究を行っています。特に最近、チタンヒドリドクラスターが不活性分子である分子状窒素やベンゼンなどの窒素-窒素結合、炭素-炭素結合の切断に特異な活性を示すことを見いだしました。