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平尾研究室電子状態理論班において開発された理論の紹介です。
MRMP (Multi reference Moller-Plesset perturbation theory)
MRMPは「性質の異なる電子相関それぞれに別の対処法を」というコンセプトに基づいて開発された、1990年代電子相関理論の決定版です。計算コストの少ない摂動法と変分原理に基づくMCSCF法とを組み合わせ、ポテンシャルエネルギー曲面全域のバランスよい記述を可能にしました。
MCQDPT (Multi configurational quasi-degenerate perturbation theory)
MRMPは多参照単状態理論であるのに対し、MCQDPTは多参照多状態の理論です。State-averageされたMCSCF関数を参照とし、複数の状態を同時に算出することを可能にしました。相互作用しうる複数状態のエネルギー準位が近接する「擬縮退状態」の記述に威力を発揮します。MRMPとMCQDPTは別々に開発されましたが、結果としてMCQDPTはMRMPを一般化し、これを包含した理論になっています。
CASVB (Complete active space valence bond theory)
CASVB法はCAS-SCF法によって得られた関数を変換し、化学結合など、これまで化学が用いてきたものに近い分子描像を得る方法です。
QCAS-SCF (Quasi-complete active space SCF)
QCAS-SCF法はCAS-SCF法の次元数の問題に対処する方法として開発されました。Active空間を互いに相互作用の少ない幾つかのsubspaceに分割し、その積空間としてCASを近似します。次元数はCASよりはるかに小さなものになるにも関わらず、ほとんど精度は変わらないことが確認されています。現在は、QCAS-SCF関数を出発とした多参照摂動法も確立されています。
GMC-QDPT (General multi configurational quasi-degenerate perturbation theory)
CASの次元数はactive空間の拡張に伴って階乗のオーダーで急増します。これを用いる限り、対象とする分子系の拡大は困難です。GMC-QDPTは、系あるいは目的に合わせて相関の取り込みに必要な配置関数だけを用いて参照空間を構成することのできる理論です。広い軌道空間が必要なときは、多電子励起配置関数を削除することで次元の問題に対処できます。GMC-QDPTは、任意の参照空間を構成できるため、もっとも汎用性が高く、一般化された理論であると位置づけています。