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研究内容

研究項目D:光系量子サイバネティクス

計画研究 D02:
光を基軸とした多キュビット量子制御

研究代表者/小芦 雅斗 東京大学大学院工学系研究科附属光量子科学研究センター 教授

最終的に光が必要となる通信部分に関わる量子操作の理論、実験を行う。物理系を問わず有用となる多キュビットの量子操作技術の原理実証実験を光により行う。光の長所短所を定量的に把握し、他の物理系と相補的に組み合わせる手法を理論的に探求する。

様々な物理系の中で、光は、量子状態の伝送に使える唯一の系であり、量子情報処理ネットワークにおいて不可欠の役割を担うと考えられる。また、事後選択によって損失の影響を切り分ければ、複雑なデコヒーレンスの影響を受けにくいことや、高精度の測定が可能なことから、高度な量子制御・検出が可能になる。このため、現在の技術レベルでは、他の物理系に比べて多キュビットの量子状態の制御・検出を行いやすい。このような特性を踏まえ、本研究では、光本来の役割である通信における量子制御と、汎用性の高い多キュビット量子制御の光による原理実証実験のふたつを柱に、理論および実験の研究を進める。具体的には、多者間量子通信プロトコル、量子効果を利用したデコヒーレンスからの状態保護、クラスター状態などの多キュビット量子もつれ状態による一方向量子計算などを、4~8キュビットを用いて行う。

理論の課題としては、さらに、本領域で扱う他の物理系にも視野を広げる。通信における量子制御では、光とは異なり損失の影響を受けにくい他の物理系と組み合わせることにより、さらに高レベルの量子制御を行う可能性を探る。汎用多キュビット量子制御では、光による原理実証実験の結果も踏まえ、その手法を他の物理系に移転する際に必要な具体的条件や、移転先の物理系の特長を生かした改良について検討する。この過程では、他の物理系の量子制御技術の進展状況の詳細が不可欠であり、また得られた知見のフィードバックがその先の進展に有益であるため、他の研究計画との有機的連携が図れると考えている。このような展開は、統一的な視点からの各物理系の持つ長所短所の定量的な理解という理学的な側面と、それらを相補的に組み合わせることで量子制御を意のままに実現するという工学的な側面の両面から、量子物理学の発展に資すると期待している。

詳細は「論文/出版物」ページをご覧ください。