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研究テーマ

(3) 染色体ダイナミクスとヒトの遺伝疾患

染色体の正確な複製と分離は、正常な娘細胞を生み出すために必須の過程です。この過程に異常が生じると、娘細胞の受け取る遺伝情報が不安定になり、細胞のがん化の要因になるとも考えられています。実際、多くのがん細胞では染色体数の変化(異数体化)が起こっていることが観察されていますが、この異数体化が果たしてがん化の原因なのか結果なのかという問題については議論が分かれています。一方、コンデンシンとコヒーシンが正常な染色体分離に必須な役割をはたしていることは、多くのモデル生物における遺伝学的解析から明らかとなっています。しかし、ヒトにおいてその欠損が遺伝疾患につながる可能性があるかどうかについては必ずしも明らかではありませんでした。これらの必須因子の機能が完全に失われると、初期発生に支障が起き、個体が生まれてこないと考えられるからです。

しかし最近になって、コーネリア・デ・ランゲ症候群とロバーツ症候群という発生異常を伴う疾患が、コヒーシンのサブユニットあるいはその制御因子の変異によって起こるということがわかってきました。すなわち、コヒーシンの動きを弱く攪乱させた場合、その必須機能(染色体分離)は正常に働いているように見えるけれども、その裏に隠されていた機能(例えば、発生に関わる遺伝子群の発現制御)の異常が顕在化してくるのではないかと推測されます。一方、あるクラスの小頭症(MCPH1)患者由来の細胞では時期尚早な染色体凝縮が観察されることが報告されていましたが、最近の私たちの研究によると、この現象がコンデンシンIIの制御異常によるものであることがわかりました。コンデンシンの制御異常と小頭症との関連は明らかではありませんが、こうした一連の研究は染色体ダイナミクスの分野に新しい流れを産み出しつつあります。私たちの研究室では、MCPH1遺伝子がコードするタンパク質の解析を通じてコンデンシンの制御機構について理解を深めるとともに、他の染色体の機能不全を伴う遺伝疾患についても興味を拡げています。

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