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研究内容

公募研究

公募研究 05(平成24年度採択):
量子コヒーレント状態の制御・検出における非平衡量子統計・熱力学の理論研究

研究代表者/三重大学 工学部物理工学科・准教授  内海 裕洋

近年、超伝導量子素子や半導体量子ドットにおいて実現される、電荷・磁束・スピン量子ビットの量子コヒーレント状態を、制御・検出する研究がなされてきた。最近では1次元伝送線共振器と結合した超伝導量子ビットを用いて、光子が数個のコヒーレント状態を制御・検出することや、 GaAs半導体2重量子ドットにおいて核スピンのアンサンブルのコヒーレント状態を制御・検出することも可能となっている。今までの研究は、量子光学を手本にしつつこれを拡張してきたといえる。

一方で近年、「揺らぎの定理」に代表されるメゾスコピック系での統計・熱力学が発展している。メゾスコピック系の統計・熱力学は、システムを外部から駆動して仕事をしたときの、非平衡揺らぎの分布を用いて構築される。この操作は、ナノスコピック固体素子における量子コヒーレント状態の制御・検出の実験技術を使えば、量子系で実現できると期待される。現在、量子ポイントコンタクト電荷計や単一電子トランジスタ電荷計を用い、半導体2重量子ドットを流れる単一電子トンネル電流の揺らぎの分布や、超伝導量子ドットにおける仕事の揺らぎの分布が精度よく測定できるようになっており、単一電子レベルで揺らぎの定理が検証されている。次の段階は、ナノスコピック固体素子における量子系を用いて、非平衡統計・熱力学の研究を行うことだと考えている。

そのためには超伝導量子素子や半導体量子ドットについて、「どのようなセットアップで何を観測すればよいか?」、「どのような手順で量子コヒーレント状態を制御・検出すればよいか?」、「電磁場環境、1/fノイズや測定の反作用は、メゾスコピック系の統計・熱力学ではどのような役目を担うか?」といった疑問を理論側が解決する必要があると考える。本研究計画では、量子コヒーレント状態の制御・検出を、ナノスコピック固体素子における非平衡揺らぎの分布の計算に適した手法であるFull counting statistics理論を用いて解析し、量子系における非平衡統計・熱力学を研究する。そしてそこで得られる知見を活かし、将来的には量子コヒーレント状態の制御・検出にともなう発熱の最小化などについて指針を与え、固体素子量子ビット集積化の一助とすることを目指す。

詳細は「論文/出版物」ページをご覧ください。