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研究内容

公募研究

公募研究 01(平成22年度採択):
量子サイバネティクスにおける量子推定理論の新たな展開

研究代表者/大阪大学理学研究科・教授 藤原彰夫

量子推定理論とは、測定を介して観測者が物理系から取り出せる情報の限界を非可換統計学の観点から数学的に厳密に論ずる研究分野である。量子推定理論は基礎的ではあるが地味な研究分野であるため、華やかな宣伝文句が飛び交う量子情報科学の他の分野に比べて認知度は現在のところ必ずしも高くはないが、だからこそ先駆的な研究成果を生み出す可能性を秘めているともいえる。本研究の目的は、量子推定理論におけるこれまでの理論的研究成果の実験的検証をめざすと同時に、そこで得られた研究成果を量子情報操作/制御の基盤技術として実現する方法を検討し、量子情報科学の発展に寄与することにある。

本研究ではまず、適応的量子推定方式の最適性を実験的に検証する.ここでは、物理系の真の状態ごとに、それを推定するための最適な測定が異なるという一般的状況を想定する。その上で、現在までのステップで得られた実験データから最尤推定値を計算し、その推定状態において最適な測定を次のステップの実験として採用する,ということを繰り返しながら、推定値と同時に測定自体も逐次的に最適化していくのが適応的推定である.この推定方法では強一致性および漸近有効性が成立することが数学的に証明されており、将来的には量子トモグラフィに代表される現行の非効率的な推定方法に代わる標準的推定方法となることが期待されるが、実験的にはまだ実現されていない。そこで、量子光学実験グループとの共同研究を通じて世界初の検証実験を試みる。

引き続き本研究では、量子通信路の推定理論の実験的検証を行う.特に、n 個の同一ユニタリ・ゲートに対して一括推定を行うとO(n2) の情報量が得られるという新規な量子効果に関する検証実験に挑戦する。さらに、量子通信路の摂動的推定理論や、凸計画法を用いた量子推定量の最適化アルゴリズムなどの理論研究も行う。

詳細は「論文/出版物」ページをご覧ください。