研究テーマ
分子システム解析チーム
分子システム解析チームでは、観測・計測と理論・計算科学を二本の柱として、複雑な分子システム特有の新奇な性質と機能を「解析」し、理解します。特に、既存の方法の利用に留まらない新しい方法論の開発に力点を置きます。観測・計測に関しては、物質評価の基盤であり汎用性の高い先進的な分光計測と、単一分子の空間分解能を有するプローブ顕微鏡による研究を推進します。理論・計算科学研究においては、古典論を基礎に置き多数の分子の集団挙動を再現しようとする分子動力学的なアプローチと、量子力学を基礎にシステムの電子状態からその性質を解明しようとする量子論的なアプローチの両面から研究を進めます。
分子システム制御チーム
分子システム制御チームでは、分子集合体を対象として、合成と物性評価の両面から分子システムの構造と機能の「制御」を目指します。超分子相互作用を用いた分子配列制御と電界効果を用いた電子状態制御を行い、伝導性・磁性・光学特性・誘電特性など、新しい分子機能の発現を行います。また、分子システムにおける電子物性の多様な発現機構を静電的相互作用の観点から明らかにするために、時空間分解ポテンシャルイメージングのための実験および解析システムを構築します。
分子システム生体チーム
分子システム生体チームでは、高い機能を持つタンパク質を中心とした「生体」分子の研究を行います。一酸化窒素還元酵素、トランスポーター、センサータンパク質、べん毛モータータンパク質、テロメア複合体など、生理的に重要で、化学・物理的にも興味深い複雑系タンパク質を対象とし、これらの分子構造をX線と電子線による解析手法を用いて明らかにします。同時に、生化学的手法と分子生物学的手法、さらに他チームとの共同研究による分子機能解析をもとに、それらの「生体分子システム」としての化学的性質を解明するとともに、新たな電子線構造解析手法の開発も行います。
分子システム融合チーム
分子システム融合チームでは、生体分子と人工物を「融合」した新しい複合系を構築し、その性質を明らかにするとともにその利用を目指します。生体分子(タンパク質、核酸など)と人工物(有機分子や高分子あるいはナノ粒子、半導体基板、マイクロ流路チップなど)の複合体(結合体)の精密合成法を確立し、その新奇な物性や機能の背景にあるメカニズムを解明します。またアミロイドタンパク質を対象に、自然界における集合体形成の機構を解明することで、新たな分子システム設計のための戦略を見出します。これらの取り組みにより、生体分子と人工物の単純な足し算ではない新たな融合機能を開拓し、それを利用したセンシング・診断応用、生命現象の制御など、医学・工学的応用の可能性を追求します。