研究内容

私たちのグループは、計算機や数理的手法を用いて、生命現象に取り組んでいます。特に多量の情報を統合して高次生命現象を理解する場合や、時空間中にパターンが展開する形態形成現象を理解するうえで、数理的手法は有効だと考えています。

過去の研究内容

マウス初期発生における左右非対称な遺伝子発現機構の数理的解明

マウスの左右性を作り出す遺伝子制御回路とその作動原理について、大阪大学の濱田博司教授と中村哲也助教(現シカゴ大学)との共同研究で解明した。実験的に得られた制御回路に基づき、数理モデルを用いて遺伝子発現のダイナミクスを解析し、観察される振る舞いを再現できる条件を網羅的に探索した。その結果、この回路が遺伝子発現の二つの安定状態(双安定性)を作り出し、左右で切り替えている可能性を示した。さらに、入力であるflowシグナルを発生途中で撹乱する実験により、この仮説を検証した。その結果、発現ダイナミクスがある程度進んだ後では入力のシグナルに撹乱を加えても左右性は失われないこと、すなわち遺伝子発現が双安定性を作り出し、システムを安定化させている可能性が確認された。