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過去のセミナー
維管束パターン形成過程における植物ホルモンおよび転写因子ネットワーク
日時: 2015年9月25日(金)13:30〜
講演者: 宮島 俊介 (奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科)
場所: 理化学研究所 生物科学研究棟 S406
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要 旨:
維管束植物のパターン形成では、細胞分裂と細胞運命決定が同調的制御されることによって、正確に組織パターンが構築される。維管束植物のモデル生物であるシロイヌナズナの根の維管束組織においては、通道組織である木部組織および師部組織が、前形成層組織をはさむ様に形成される。この維管束パターンは、根端分裂組織に存在する幹細胞である維管束始原細胞が並層分裂を繰り返しながら構築されるが、この時、師部組織の始原細胞周辺部において、木部始原細胞にくらべ、より盛んに並層分裂が生じる。これまでの研究から、この維管束パターン形成過程において、オーキシンおよびサイトカイニンという2つの植物ホルモンの相互抑制的シグナリング経路が機能しているが知られている。その結果として、木部始原細胞においてオーキシンが、また、師部・前形成始原細胞においてサイトカイニンのシグナルが活性化することが近年明らかになっている。本研究では、このオーキシンとサイトカイニンの相互抑制的シグナリング経路の下流イベントとして、2つの転写因子群が発現誘導されることを発見し、さらに、これら2つの転写因子群は、細胞分裂に対して相反的な機能を有することを見出した。本発表においては、植物ホルモンおよびその下流で機能する転写因子群がどのようにして維管束パターン形成を制御するかについて討論したい。