宮坂 茂樹 氏(東京大学工学部物理工学科)
「ペロブスカイト型V酸化物の軌道秩序と一次元的な光学励起」

 ペロブスカイト型RVO3(Rは三価の希土類イオンあるいはY)は軌道秩序が生じるt2g電子系の一つとして注目されている。本系ではVの価数は3+で3d2の電子状態をとる。全てのVサイトにおいて一つの電子がdxy軌道を占め、残りの一つの電子がdyz、dzx軌道を交互に占有することで軌道秩序が生じている。RサイトにLaからLuまでのイオン半径の異なる希土類元素を順に入れることによりV-O-Vの結合角が変化し、軌道秩序及び反強磁性磁気秩序の転移温度とそれらのパターンは系統的に変化する。また、この磁気、軌道秩序の発生に伴い一次元的な電子状態が生じ、この電子状態に対応した光学応答が観測されている。以上のようなRVO3のスピン−軌道秩序に関する相図、光学反射スペクトルの異方性、更に最近のラマン散乱スペクトルの結果について講演を行う。