研究概要


 私たちの身の回りには、プラスチックや医薬品など様々な有機化合物があります。これらの開発や製造を支える高分子化学や有機合成化学など、物質変換の化学は一定の成功を収め、人類社会の発展に貢献していますが、例えば資源の有効利用や環境調和性などの観点から見ると、未だ満足のいく水準には達しておらず、更なる進歩が期待されています。
 
 当研究室では、
有機金属化学を基盤とする新しい分子触媒の開発が次世代を担う物質変換化学の重要な鍵となると考え、研究を進めています。特に私たちは、スカンジウムやイットリウム及びランタノイド15元素からなる希土類金属の錯体を中心に、研究を行っています。これら希土類金属は、これまで有機合成に広く利用されてきた後周期遷移金属、あるいはTi, Zrなどの周期表上近くに存在する4属遷移金属とも異なる性質を持つと期待される興味深い元素群ですが、その研究は他の金属元素に比べ立ち遅れており、希土類錯体の化学は触媒への利用といった応用化学的側面だけでなく、基礎化学的にも非常に興味ある研究領域です。私たちは、新しい希土類錯体の設計、合成、構造解析や、錯体構造と触媒活性の関係などを研究し、各種金属の特徴を生かした新触媒の開発から、それら触媒を用いる新規触媒反応の開発まで一貫した研究展開により、従来の触媒では実現困難な新しい物質変換プロセスや、より効率的かつ選択的な重合反応有機合成反応などの開発を目指しています。また、金属を1つしか持たない単核錯体に加え、全く新しい錯体触媒創製を目指し、従来の錯体にない特異な協同効果を持つと期待される多核希土類錯体、希土類とは大きく異なる性質を持つ後周期遷移金属などを組み合わせた異種混合型多核錯体などについても研究を行なっています。更に、我々の触媒や反応によって生み出される新しい物質を基に新規機能性材料の開発を行なうなど、幅広く研究を進めています。

 以下にこれまで行ってきた研究について、その概要を紹介します。

1. 高機能ポリマーの創製を目指した新規精密重合触媒の開発

2.高効率・高選択的な有機合成を目指した新規有機金属触媒の開発

3.多核希土類ポリヒドリド錯体の創製と反応基質に対する多点協同活性化