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花栗哲郎は実験機器開発が好きで、最近は特に低温超高真空で動作する走査型トンネル顕微鏡(STM)の開発を行っています。実験機器を作るにあたり、特殊な資材の入手、機械加工の依頼先、組み立てのちょっとしたコツなどに、いつも苦労します。これまでの経験で得た情報のいくつかをリストしました。「**についてもっと知りたい」、「こんなうまい方法もあります」等ありましたら、是非ご連絡ください。
寒剤取扱い
STMユニットの図面
我々が使っているSTMの図面(PDF)です。ご意見、ご質問等、大歓迎です。
STM本体
探針、試料ホルダーとチャック
- 接合部は全てEpotek H74で接着しています。
- 部番3の外側は、ノリタケのレジネートペーストD-24を焼成して作製した金膜でシールドしています。
- 組立マニュアルはここにあります。
- 本体の板バネは直径3.5mmのサファイヤ球を押しています。
- チャックの板バネは直径1.5mmの超硬球を押しています。
円筒ピエゾスキャナーの設計
STMを安定して動かすためには、ピエゾスキャナーの機械的共振周波数をできるだけ高める必要があります。また、ピエゾの先に探針ホルダーのような「重い」ものがつくと、共振周波数は大きく低下します。いろいろなPZTの材料で円筒ピエゾスキャナーを作ったとき、共振周波数とスキャン範囲を計算するExcelのワークシートを作りました。(使用する際は自己責任でお願いいたします。)
超高真空配線用のハンダ付け
超高真空中での配線の固定はEpotek H20Eのようなデガスの少ない導電性エポキシを使えば良いのですが、やはりハンダ付けの方が作業はずっと楽です。しかし、伝統的なPb-Snのハンダは、蒸気圧が高く超高真空では使えない、といろいろな教科書に書いてあります。私は力があまりかからないところで、高温に弱いところ(ピエゾの電極への配線等)はインジウムを、その他の部分は超高真空でもOKらしいCastolin Eutectic 157を使ってハンダ付けしています。フラックスを使う必要がありますが、市販のフラックスは何が入っているか不明でちょっと気持ち悪いので、私は乳酸を使っています。CとHとOしか入ってませんし、強い毒性もなく、水で簡単に落とせるので便利です。
電線
特注の電線を少量注文するのはなかなか困難です。私は以下を利用しました。
- ポリウレタン(UEW)やポリエステル(PEW)のマグネットワイヤーはあちこちで手に入りますが、ハードなベーキングに耐えるポリイミド被覆線(ML)、特にマンガニン線は国内メーカーを散々探しましたが、少なくとも少量(〜1 kg以下)で注文できるところは見つけられませんでした。私は(有)テクを通してCalifornia Fine Wireから買いました。
- Cooner wire Inc.では、極細(1mm以下)のフレキシブル同軸ケーブルを外部導体編組で作ってくれます。私は直接買いましたが、センサテクノス(株)が国内代理店のようです。マグネットワイヤーも作っているようです。
極細外部網組同軸の特注は国内でも何社か問い合わせたのですが、数年前は作ってくれるところを見つけられませんでした。
セラミックスの加工
STMのボディの材料にセラミックスは良い選択だと思います。ただし、凝った設計をすると、加工が難しく(できなく)なります。私が使用しているSTMユニットの部品は次の会社に加工をお願いしました。
タングステンワイヤのカット
STMの探針にタングステンワイヤを電解研磨したものを使っています。しばしばタングステンワイヤをカットしたい場面に遭遇しますが、普通のニッパで切るとワイヤが「裂けて」しまったり、すぐに刃がボロボロになってしまいます。タングステンカーバイドニッパ(たとえばRSコンポーネンツ品番735-728 取り扱い中止のようです。他にも「超硬ニッパ」等で検索すると、何社かヒットするようです。)は高いですが、完璧に切れます。
極細電線の被覆剥き
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