山下 靖文 氏(スイス連邦工科大学)
「三角格子ハバードモデルに於ける軌道縮退とトリプレット超電導状態の安定性について」

 NaxCoO2yH2O を記述する単純化されたモデルとして、三角格子上のt2g-軌道縮退ハバードモデルをRPA近似により研究した。1電子ハミルトニアンのホッピング項として最近接コバルトd軌道間の直接の重なりのみを考慮すると、超電導状態となる場合(x=0.35)の電子密度が、van Hove フィリングに対応していることが分かった。有効ペアポテンシャルをスピン、軌道及び、スピン・軌道結合揺らぎにより記述し、線形化されたギャップ方程式を解くことにより常磁性相からの不安定性を議論した。その結果、フント結合の弱い領域ではスピン揺らぎに加えて、軌道及び、スピン・軌道結合揺らぎの影響によりトリプレットf波が、強い領域ではスピン揺らぎによりp波が最も安定な解となることが分かった。