量子化学における
計算機技術とソフトウエア開発




量子化学の一つの目標には、現実的な分子の電子状態や化学反応過程をコンピュータ上で数値的に再現あるいは予測することです。近年、コンピュータの性能は飛躍的に成長してきました。理論の発展と相まって、コンピュータによる分子の科学計算は有力な解析手法として確立しつつあります。

計算機環境

現在、平尾研究室では、以下のような大規模な計算機環境を整え、より大規模な分子系を高速に計算しています。


IBM RS/6000 ワークステーション (32台、72 CPU)
高性能な計算機であるが、高価である。


Linux パソコンクラスター (30台、30CPU)
近年のパソコンは、安価であるにもかかわらず性能が高い。

以上の複数の計算機は高速ネットワークで接続されていおり、
研究室レベルでも比較的安価なコストで,1つの大きな計算を複数の計算機で分割処理する「並列計算」が実現できる。

以上の計算機環境で、平尾研究室では、市販ソフトおよびフリーソフトの分子軌道パッケージや、研究室で開発したプログラムを使って、分子の科学計算を行っています。


ソフトウエア開発

平尾研究室では、新しく理論を開発することと同時に、理論を現実の分子系に応用するために、計算ソフトウエアの開発も行っています。

これまで開発されてきたプログラムには、以下のようなものがあります。
  • Multi-Reference 2nd-order PT and its Derivatives program ( MR2D, which is for the MC-QDPT method )
  • Multi-Configuration SCF method ( QCAS code, CASVB )
  • Relativistic correction ( RESC, DK3 code )
  • DFT ( BOP, gradient code )
  • QM/MM ( to treat Excite states )
  • RPA and TDHF code
  • One- and Two- Electron Integrals ( Spherica )
  • Direct and Conventional RHF, UHF, ROHF code
  • 4-component relativistic HF and KS SCF code
平尾研究室では、これらのソフトをパッケージ化し、フリーソフトとしてディストリビュートする予定です。


 二電子反発積分プログラムSpherica(黄棒グラフ)の性能比較。
(基底関数は一般短縮基底。)