*ナノサイエンス実験棟 ナノサイエンス実験棟外観 物質科学研究棟の西隣に位置する。内部は履物を変えて清浄環境を維持。クリーンルーム、極微細実験室、低温実験室、顕微鏡室、化学処理室及び一般実験室等多数。2階建てで内部は吹き抜けになっており、居室の代わりに広い交流スペースを設置。 低速走査電子顕微鏡・電子ビームリソグラフィー装置 超高真空(10-9Torr以下)ベースで、大気中から試料を導入して2keVの加速エネルギーで走査電子顕微鏡観測及び電子ビーム描画ができる。電子線が低速なため、試料を殆ど前処理することなく観測が可能。測定環境は超清浄であり、電子ビーム誘起の吸着も殆ど見られない。ナノ棟備品装置。 電気化学STM装置 水溶液中動作を基本とし、試料とチップの電位をポテンショスタットを使用して電気化学的に制御するタイプの装置。VeecoのNanoscope Eを使用。生体物質の観測専用で利用。今までにリン脂質分子の単分子膜を利用したモデル細胞膜を使用して数々の観測に成功。電気化学的な操作により、流動的なリン脂質分子を固定して、リン脂質分子1個1個を画像化することもできた。また、リン脂質のなす超微粒子や、リン脂質分子に配位するタンパク質を捉えることにも成功した。 電気化学STMのサンプル部分 電気化学STM装置の試料セル。この写真では、定番の金ビーズ単結晶試料がセットされている。金ビーズ表面にできる高品位の自由固化単結晶面を利用する。電極電位制御用の対電極及び参照電極が組み込まれているのが見える。この上部に、ピエゾスキャナーを取り付けて、STM画像が観測できる。金ビーズのはまった溝に、電解質水溶液を注いで固液界面を形成し、そこにSTMのチップ(絶縁コーティングする)をアプローチする。 固液界面観測用のフーリエ変換赤外吸収分光装置(FTIR) 最新型のフーリエ変換赤外吸収分光装置。ブルカー社製。赤外線検出器(MCT)に新技術のADコンバーターを装備。サンプル室内には、ウエッジカットしたケイ素プリズムを設置し、プリズム表面に形成する吸着層を、赤外線の内面多重反射で捉えるメカニズムとなっている。さらにこのプリズム面を水溶液で覆って、固液界面環境での吸着種が観測できるよう手を加えてある。 この装置も、リン脂質単分子層の観測を目指している。即ち、電気化学的ポテンシャル制御下において、リン脂質分子が変性する様子を、まさに分子レベルで観測して、STM観測の結果との整合性を追及しようとしている。スペクトルの感度は、固液界面測定では最高レベルである。リン脂質の膜性環境を維持するため、極めて高度な試料の制御を必要とする。一言で言うと、大変な実験である。 蛍光顕微鏡 オリンパス製正立落写・透過型の金属用光学顕微鏡。蛍光観測のためのキセノンランプ光源と各種波長範囲のフィルターを装備。汎用性が高く、今までGFP(グリーンフルオレッセントプロテイン)、PYP(フォトアクティブイエロープロテイン)、及びリン脂質膜のSTM観測前の試料の予備観測に大いに活躍している。 ガス中STM(トンネル発光計測装置付き) 生体物質は殆どが水溶液中で活性を示すものなので、STMも溶液中で動作させる。 トンネル発光の場合は、STM動作時の雰囲気を制御することで、生体物質の活性を維持した状態で観測を目指す。この装置も、トンネルギャップから発生する微弱な可視光発光を検出する液体窒素冷却CCD分光器を備える。なかなか困難な実験だが、このたびついに蛍光タンパク分子のトンネル電子励起発光の検出に成功した。 ガス中STMのグローブボックス グローブボックス内は乾燥窒素でパージして、湿度を下げて使用する。これは、基板表面(金属)の表面を酸化や汚染から防護し、かつ生体物質の活性を可能な限り維持するためである。 ガス中STMのスキャナー及び光検出用光ファイバー STMはVeecoのNanoscope Eを一部改造して使用。トンネルギャップに直径1mmの光ファイバーを、顕微鏡カメラでモニターしながら近接させて、光学アライメントを正確にし、測定確度を高めている。 ナノ棟クリーンルーム ナノ棟の共用施設。大規模なクリーンルームであり、使用者が限られているため、清浄度は高い。半導体デバイス作製用の蒸着装置、スパッタ装置、CVD装置、イオンビーム装置と、ナノリソグラフィー用の電子ビーム描画装置、走査電子顕微鏡等、多数の装置があり活用されている。我々は主に蒸着装置を利用している。 ナノ棟クリーンルーム 電子ビーム加熱蒸着装置(右)およびスパッター製膜装置(左)。 |