個別研究内容紹介

遅延蛍光性有機金属錯体の開発

有機金属錯体は固体状態で“安定”であるため、発光材料としても有望であり、例えばイリジウム(III)錯体は有機ELのリン光型材料として用いられています。私たちは希少金属のためコストがかさむ高価なイリジウム(III)錯体をより安価な金属に置き換えるため、遅延蛍光性銅(I)錯体の開発を行ってきました。遅延蛍光性銅(I)錯体の分子設計指針は、これまで多くの場合、いわゆる“金属から配位子への電子移動(MLCT)”に基づいていました。今回アリールチオレート配位子を用いることで、“配位子→配位子遷移(LLCT)”を発光オリジンとする高効率遅延蛍光を示す銅一価錯体の合成に成功し、その発光特性に関する研究を行いました[1]。

遅延蛍光性有機金属錯体の開発
発光スペクトルの変化(青緑色→オレンジ色)と構造変化(アリール基の回転 図aとb)

その錯体は室温、固体で強い青緑色の発光量子収率がほぼ100%であることが判明し、また発光寿命の温度依存性を測定したところ、遅延蛍光であることが確認できました。溶液中ではオレンジ色の発光が観測され、青緑色からオレンジ色への発光色変化はアリール基の回転構造変化に基づく発光色変化であることを提案しました。