平山量子光素子研究室


  • 2012年4月1日に平山量子光素子研究室が立ち上がりました


研究概要

半導体レーザ・LEDなどの半導体発光素子は、これまで数十年の勢力的な開発によりその波長範囲が大きく広がり応用範囲を飛躍的に広めてきました。本研究では、半導体発光素子の未開拓の波長領域である、テラヘルツ(最長波長領域)、および深紫外(最短波長領域)の発光素子実現に挑戦しています。新しい半導体材料の結晶成長技術の開拓や、革新的な量子へテロ構造の導入などを行うことで、未開拓波長の発光デバイスの実現を目指しております。それらの限界性能の追及、新規応用分野の創出を通して、豊かな人間社会の実現に貢献することを目標としております。




AlGaN系半導体の結晶成長技術の開拓と深紫外発光ダイオード(DUV-LED)実現

波長が220-350nmの深紫外LED・半導体レーザは、医療、殺菌・浄水、高密度光記録、照明、生化学産業、化学工業、公害物質の高速分解など、幅広い分野での応用が考えられ、その実現が大変に期待されています。本研究では、AlGaN系窒化物半導体の結晶成長技術を開拓することで、これまで実現が難しかった深紫外発光ダイオード(DUV-LED)の開発に成功しました。 研究では、新たな結晶成長法の考案により世界最高品質のAlN結晶を実現しました。それを用いて深紫外の発光効率を従来比で100倍程度改善し、非常に高い内部量子効率(50-80%)を実現しました。さらに、多重量子障壁を用いた電子リーク制御法による注入効率の飛躍的改善、光取り出し効率の改善など、様々な技術を投入することで、最短波長220-280nm・高効率LEDを世界に先駆け実現しました。 高効率DUV-LEDの出現により、家庭内の多くの電化製品(冷蔵庫、空気清浄器、エアコン、浄水器など)に小型殺菌灯を搭載することができ、また携帯型の殺菌灯も利用できます。そのほかにも、工場の排水・排煙の公害物質の除去(ダイオキシン、PCB、NOxなど)、皮膚治療などの医療、紫外硬化樹脂など工業への応用も考えられます。高演色ライト(太陽光に酷似)を作製し家庭の食卓などで利用するサンライトを実現することも可能になります。将来、短波長LDの出現により、現在のDVDの記憶容量を飛躍的に増加(4倍程度)させることも期待されます。また、DNAのオペレーションなど期待される応用システムは幅広いです。

 

テラヘルツ量子カスケードレーザの開発

光と電波の間の周波数領域に位置するテラヘルツ光は、電波の透過性と、光の高分解能特性や取り扱いやすさなど両方の性質を兼ね備えているため、各種透視検査・非破壊検査器など幅広い応用が期待されています。テラヘルツ量子カスケードレーザ(THz-QCL)は、小型・高効率、長寿命、連続出力、安価なテラヘルツ光源としてその実現が期待されています。しかし現在、THz-QCLは開発途上にあり、低温動作しか得られず、また、実現された周波数も1.2-4.8THzの領域に限られています。本研究では世界最高動作温度に迫る、143KでのTHz-QCL発振を実現しました。また、今後の素子高性能化の方法についての世界初実証も行っています。さらに、まだ実現していない5-12THzやサブテラヘルツのQCLへの試みを新たに始めています。今後、THz-QCLの実用温度動作と周波数領域拡大の実現により、応用範囲の飛躍的な拡大が期待されます。