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研究内容
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光と電波の技術を融合したテラヘルツ波ビーム走査 (主担当:牧 謙一郎)

 テラヘルツ波の高速ビーム走査技術に関する研究を行っている。光技術の差周波混合と、電波で利用されているフェーズドアレーアンテナの原理を融合した新しい走査手法を提案した。これにより、従来用いられていた可変移相器やアレー素子さえも必要とせず、光の既存走査技術の数百倍も広い角度範囲を、1秒間に100億回もの超高速で走査することが可能となる。このアイディアは、光と電波の間に位置するテラヘルツ波だからこそ成し得る方法と言える。この技術は、テラヘルツ波を利用した高速透視イメージング装置や、超高速無線通信用端末追尾アンテナに応用できる。

参考文献

[1] K. Maki, and C. Otani, "Terahertz beam steering and frequency tuning by using the spatial dispersion of ultrafast laser pulses," Opt. Express 16, 10158 (2008). 
[2] K. Maki, T. Shibuya, C. Otani, K. Suizu, and K. Kawase, "Terahertz Beam Steering via Tilted-Phase Difference-Frequency Mixing," Appl. Phys. Express 2, 022301 (2009)

特許出願

牧 謙一郎、澁谷 孝幸、大谷 知行、川瀬 晃道,“テラヘルツ波ビーム走査装置の方法”,特願2008-115034
牧 謙一郎、澁谷 孝幸、大谷 知行、川瀬 晃道、“テラヘルツ波ビーム走査装置と方法”、外国出願PCT/JP2009/57909


図1.(a) 従来のフェーズドアレーアンテナと、(b) 提案するテラヘルツ波ビーム走査の原理。片方の励起光の入射角を調整して、2光間の空間的な位相差分布を変化させることで、テラヘルツ波の波面を傾けてビームを走査する。(a)で示すような多数の可変移相器やアレーアンテナを必要せず、光偏向器一つだけあれば走査が成される。


図2.ビーム走査実験光学系。ここでは、他の研究内容である「空間分散光」の技術も取り入れている。


図3.励起光の入射角に対するテラヘルツ波ビームパターンの変化。入射角を調整することで、テラヘルツ波のビーム伝搬方向がシフトしている。


図4.励起光入射角とテラヘルツ波走査角度の関係。差周波混合の性質により、走査角度は入射角度の数百倍に増大される。この倍率はテラヘルツ波と励起光の波長の比で決まる。つまり、入射角をわずかに変化させるだけで、広い角度範囲でテラヘルツ波ビームを走査できることになる。


図5.ビーム走査型イメージング装置への応用例。既存の光偏向器を用いて励起光の入射角を調整することで、高速イメージングが実現される。光偏向器の一般的な最大偏光角度は1°以下であるが、角度が増大される効果から、テラヘルツ波ビーム焦点を広い範囲で走査することができる。


図6.高速ビーム走査の応用例。イメージングが高速化されることにより、大量物体の全数検査が可能となる。例えば、製品、食品に含まれる異物、危険物の非破壊検査が挙げられる。


図7.テラヘルツ帯無線通信用アンテナへの応用例。移動体端末にテラヘルツ波ビームを集中し、通信品質を向上させる。端末の移動に応じてビームを自動で追尾させ、また、他の端末に高速で切り替える。