J Exp Med,2010のポイント
DOCK2は、低分子量GTP結合蛋白質(Rac)を活性化することで、細胞骨格の制御に関与する機能分子です。この論文(JEM, 2010 in
press)では、TLR7/9刺激pDCからのI型IFN産生におけるDOCK2の役割が明らかになりました。DOCK2欠損pDCでは、TLR7/9刺激による炎症性サイトカインの産生誘導は正常でしたが、I型IFN産生が選択的に障害されていました。また、DOCK2欠損pDCでは、Racの活性化、およびアクチン重合が障害されていました。このことから、DOCK2によるRacの活性化、アクチン重合が、TLR7/9刺激pDCからのI型IFN産生に必須であることが明らかになりました。TLR9で刺激されたDOCK2欠損pDCにおいて、TLR9の細胞質内アダプター分子MyD88直下で起きる、セリンスレオニンキナーゼIRAK-1がリン酸化され分解される経路、および、PI3キナーゼやMAPキナーゼ活性化に至る経路は正常に機能していましたが、IKKαのリン酸化およびIRF-7の核への移行が顕著に障害されていました。さらに、MyD88からIFN-αプロモーター活性化に至る経路は、リン酸化されないように変異されたIKKα、あるいは、キナーゼ活性を持たない不活型IKKαにより阻害されました。このことから、DOCK2によるRacの活性化は、IKKαのリン酸化、活性化に必須であり、DOCK2欠損によりIKKα活性化が障害され、IRF-7活性化が低下し、IFN-α遺伝子発現が障害されていると考えられました。また、興味あることに、IKKαはTLR9依存性にリン酸化されましたが、RacはTLR9非依存性に活性化されました。すなわち、TLR9刺激pDCにおけるI型IFN産生誘導経路(TLR9→MyD88→IRAK-1→IKKα→IRF-7→IFN-αプロモータ−活性化)において、DOCK2→Rac経路はIKKαレベルで制御しているということが明らかになりました。